アスイク 代表のブログ

こどもの貧困問題、NPOの経営、生き方在り方などについて。

インド紀行 Part3

さて、インド紀行第3部(後づけ)も、今回でようやく終了です。

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ちょいと疲れてきたので、パピーのいやしショットで一息。

が、インドって狂犬病で亡くなる人が世界一多い国なんだそうです。確かに、町中に野良犬が寝転がっていました。「たぶん大丈夫だけど、夜になると狂暴化するから気をつけて」。そんな現地スタッフからのアドバイスを思い出してしまうと、こんなパピーにも多少ココロがざわつきます。。。

 

さて、一行はデリーから飛行機で2時間半。インド南部の都市、バンガロールへ。

まず驚くのは、デリーとは対照的な整然とした街並み。クラクションを鳴らして走る車もほとんどいなければ(デリーではクラクションを鳴らしていない車がレア)、道端に落ちているゴミも少ない。さすが、インドのシリコンバレーともいわれる都市です。

社会起業家の父ともいわれるビル・ドレイトンが創設したアショカ財団。そのインド支部であるアショカインディアは、閑静な町の一角にありました。日本の麻布十番を連想させるような、セレブ感ただよう町並みです。

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アショカは、ハイブリッド・バリュー・チェーンと呼ばれる、企業と社会起業家がタッグを組んで社会問題の解決を加速する手法を推進し始めています。

BoPと呼ばれる膨大な未開拓のマーケットである貧困層に対して、現場に近い社会起業家がその知見やネットワーク、効率的なオペレーションを、企業が製品・サービスを提供するというコンセプト。日本で僕たちが進めている動き方に、非常に近いものがあります。

本場でこのコンセプトを学べるとワクワクして、失敗例やコラボレーションのポイントを質問したのですが、答えをもらえないまま、時間が終わってしまいました。どうやらインドでもまだそこまでの知見が蓄積されておらず、また某世界的コンサルティングファーム出身者がほとんどを占めるアショカでは、あまりそのあたりの情報をオープンにしないのではないか、とのこと。これには、ひじょうにガックリきました。

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モヤモヤした気持ちのまま、次のミーティングへ。

 

ソーシャルベンチャーパートナーズ(SVP)インディアのメンバーとのダイアログ。

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SVPは、シアトル発祥のソーシャルベンチャー支援組織。民間企業のプロフェショナルを中心としたパートナーが、お金、専門性、時間を投資して、ソーシャルベンチャーの成長をサポートする活動です。日本にも、SVP東京 http://www.svptokyo.org/ SVP四国が立ち上がっています。

 

SVPインドはまだ立ち上がったばかりのようでしたが、何億という資産を築いた起業家や某大企業のトップマネジメントの関係者が関わっていたりと、日本とはまた違ったスケール感にやや圧倒されてしまいました。

 

しかし、どうやらインドでも景気後退の後にGrantやDonationが減ってきており、NGOやソーシャルベンチャーの資金調達も苦しくなってきているようです。

地方で子どもたちのLearning Centerを運営し、その運転資金を都市部に建てた図書館からの収益でねん出している教育NGOの事例などは、なかなかに面白そうでした。(NGOが図書館の株式の51%を保有しているらしく、インドではこんなこともありなんだ、と感心しましたが、日本でもあながち不可能なことではないかもしれません)

 

翌日に訪れたのは、同じくバンガロールにあるアユールヴェード医院。

インドにはアユールヴェードという伝統医療がありますが、対症療法的な西洋医療ではカバーできない生活習慣、生き方そのものにまで踏み込んだ療法です。これを現代に甦らせたのが、ラジブ氏。 

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アユールヴェード医院の面白いところは、この伝統医療に近代的マネジメントの手法を掛け合わせ、高品質で再現可能な医療行為として普及させようとしているところです。元モトローラインドのCEOという経歴をもつラジブ氏。元々モトローラ社が開発したシックスシグマという品質管理手法を応用し、経験・暗黙知にたよりがちだった伝統医療を標準化しています。

また、西洋医療にくらべて医療費自体も格段に安いため、保険会社とも提携してより多くの人がこの伝統医療を受けられるように仕掛けているそうです。

 

この視察ツアーも、いよいよ最後です。

占めは、古着などを農村部へ提供しているグーンジュ。http://goonj.org/

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農村地域にリサイクル品を届けるチャリティ活動かと思いきや、「洋服は通貨」という一瞬「?」な思想が飛び出します。

グーンジュでは、タダでリサイクル品を配るということをしません。リサイクル品を提供する代わりに、村人たちが地域清掃をしたり、橋を建てたり、必ず村人主体のプロジェクトを実施することを求めます。なぜでしょう。

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その理由を語る、元ジャーナリストのアンシュ氏(アショカフェロー)。

アンシュ氏は、「尊厳を守るためだ」と端的に語ります。無償の施しを与えられ、村人たちの尊厳を傷つけてはいけない。これは、以前のブログに書きましたが、僕たちも無償の支援による負の側面に気づいていたため、心の底から共感する言葉でした。

ある日、極寒の農村地帯で村人が凍え死に、その遺体に寒さをしのぐため子どもが抱き着いて寝ている光景を目の当たりにし、この活動をはじめたそうです。

そこまで深く聞き取れなかったのですが、おそらく彼は、衣服を提供することで凍死という尊厳のない死をふせぎ、さらに施しを与えないことで村人たちの尊厳を守る。そんな風に、「尊厳を守ること」を軸に据えて、この事業を組み立てたのではないでしょうか。

貧困層にリサイクル品を提供する事業じゃないんです。何のための事業なのか。その核を研ぎ澄ませることが、どれだけ事業に深みと共感をもたらすか。アンシュ氏との短いやり取りの中で、考えさせられました。

 

以上、かなりあっさりでしたが、9日間のインドでの体験です。

あらためてまとめてみると、やはり表面的な理解で終わっているな、と少しだけ侘しい気分になります。

でも、限られた情報の中にも、何か大きな道筋がぼんやりと見えてきたような感覚もあったと言いたい。

 

リサイクル品を通して、農村にすむ人々の尊厳を守ることを目指すグーンジュ。

村の起業家のチカラを引き出して持続可能な村を目指すドリシュテ。

 

彼らから、「社会的な弱者への支援」という言葉は一言も発せられなかった。

支援する、される上下関係ではなく、おなじ社会の一員としての対等さ、可能性を信じ、それを事業活動を通して体現している。

だからこそ、これだけ多くの人に受け入れられ、影響を与えている。

 

そして、

スケールアウトは、目の前の凡事に徹底し、スタッフのモチベーションを邪魔しなかった結果だと語るアイボランティアのラウール氏。

できないことをできないと正直に言い、村の起業家自身の目的の実現をサポートすることを大切にしているドリシュテのスタッフたち。

 

圧倒的な社会インパクトは、信頼、凡事徹底、人のチカラ、そういった小さなことの積み上げにすぎないことを、身をもって示している。

 

これだけのすごい取り組みを表すには、ちょっと感傷的で輪郭のぼやけた言葉かもしれません。それでも僕にとっては十分すぎるくらい、この先の道を示してくれた気がします。

 

もう、そろそろインドじゃない国にも行ってみたいと思います。とか言ってると、またお呼びがかかりそうな気も。そういう人生なんです、きっと。

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