アスイク 代表のブログ

こどもの貧困問題、NPOの経営、生き方在り方などについて。

インド紀行 Part2

インドのアショカフェロー iVolunteerにつづいて訪れたのは、マトゥラというデリーの南部にある小都市。

道を走っているだけで、観光案内人がひっきりなしに声をかけてくる町。インドに来たなぁと、やっと12年前の記憶といまがオーバーラップしてきました。

 

そこから、さらに脳震盪を起こしそうなデコボコ道を突き進んでいきます。原野を通り越すと、写真のような原始的な村の光景が現れてきました。

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こんな僻地に、いったい何があるのでしょうか。。。

行き着いた小さな町のキオスク(雑貨店)。どの町や村にもある雑貨店ですが、下手なデリーの店よりも圧倒的に豊富な品揃え。

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こんなお店の仕掛け人となっているのが、ドリシュテ社です。http://www.drishtee.com/

ドリシュテは、インド北部を中心として、農村地域に広大な流通網を築き上げています。これまで農村部のお店は、自分たちで商品を仕入れに都市まで出なければならず、その結果として営業時間のロス、慢性的な品揃えの不足に悩まされ、村の人々は良くないものを高く買わざるを得ませんでした。

しかし、ドリシュテがあまりにも非効率で誰も手を付けなかった農村部への流通網を築いたおかげで、店の主は良い品を手間をかけずに安定的に仕入れることができ、村の人々も良いものを以前よりも安く手にすることができるようになっています。

ドリシュテのアプローチでユニークなのは、村の起業家をエンパワメントしていること。ドリシュテのスタッフが村長などのキーマンから紹介で、信頼され、エネルギッシュな村の起業家を探し当て、彼らを下から支えるカタチで自分たちの流通網を使ってもらうという考え方です。

そもそも、ドリシュテが目指しているのは持続的な村を築いていくこと。日用品の流通は彼らのサービスの1つでしかなく、IT教育、マイクロファイナンスなど、村の自立的な維持・発展に必要なサービスを複合的に提供しています。

こういったサービスをドリシュテが直接村の人々に提供するのではなく、村に存在する起業家を発掘、育成、仕組みで支えていくことで、広大なインドにシステミックな変化を起こそうとしているわけです。ドリシュテがサポートしている村の起業家は、14,000人以上。加速度的にこの数を増やし、ドリシュテという民間企業が圧倒的な社会変革を生み出しつつあります。

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これは、同じ村にあるIT教育センター。左側の部屋では、ITの講義が行われ、右の部屋では、村に住みながらにして、下の写真のように実際にPCをつかった訓練を受けることができます。教材を提供しているのは、ドリシュテが提携しているマイクロソフトです。

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また、ドリシュテは政府とも提携し、75万人(!)の職業訓練を展開しはじめています。

下が、その職業訓練所の建物。ICT、手工業、農業、建設など、多様な種類の職業訓練が行われています。(このオジサンはたぶん関係のない人です。絶妙なタイミングでフレームインされましたw)

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下は、村の女性を対象にした刺繍の職業訓練。この手仕事から、部屋にかざる神像の着物などが生まれます。

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全然余談ですが、フィールドでヒアリングをしていると、いつの間にか野次馬のインド人が入り乱れ、ほとんど何も聞こえなくなります(笑)。

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写真下の真ん中にいる男性が、このエリアを担当するブランチの責任者(なんと、齢27歳!!!)。彼やその下にいる献身的なスタッフたちが村長や村の起業家と丹念に信頼関係を築き、ドリシュテのモデルを広めています。

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おそらく、ドリシュテのネットワークの核になっているのは流通網などのシステムではなく、一つひとつの現場で生み出されている村人たちとの関係性なのではないか。そう思うにつけ、僕はどうやって彼らが村のキーマンたちと信頼関係を築いているのかが気になって、何に気をつけているのか尋ねたところ、こんな答えが返ってきました。

「嘘をいわない。できること、できないことを正直に伝える」

「相手が目指しているものに近づく道を知り、どう達成できるかを教える」

そういった守るべき原則が、現場のスタッフからパッと帰ってくること。そのこと自体に、ドリシュテという組織の強さを感じます。

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デリーの高層ビルにあるドリシュテ社の本部では、経営実務を取り仕切るシッダルタ氏が対応してくださいました。

ポイントを絞り、フレームワークで端的に自分たちのコンセプトを語るシッダルタ氏。10数年の民間企業での実務経験とその後の国連での経験を有する彼のような人が、この巨大なシステムを動かすエンジンになっています。

一番印象に残っているのは、彼が語っていたTrust Dificit(信頼の不足)という言葉です。「これまで口先でいいことを言って責任をもたない企業やNGOに、村人は信頼を失ってきた。だからこそドリシュテは、頻度高く村人とコミュニケーションをとって信頼を得る努力をしている」。

あぁ、やっぱりこういうことなんだ。ブランチのスタッフが語っていたように、村の起業家たちとの丁寧で誠実な信頼関係が、ドリシュテのネットワークを築いているんだ。僕たちが日本で大事にすべきものを、目の前に広げてもらったような気がしました。

〜Part3につづく〜